技術士 総合技術監理部門 過去問解説 情報管理 人工知能(AI)~必須科目(択一式)H29-1-17

今回も、技術士第二次試験 総合技術監理部門 択一式H29過去問を見ていきます。


平成29年度技術士第二次試験 総合技術監理部門 必須科目(択一式)

情報管理 人工知能からの出題です。

第一次~第三次ブームのことがよく理解できていなかったとしても、選択肢5つにおいて、ある部分に違和感を持てれば、正答しやすい問題といえます。

選択肢⑤において、「人間のように考えるコンピュータ」というところですね。

事例をイメージしてみると分かりやすいかと思います。

例えば、将棋のコンピュータソフトは、過去のプロ棋士の指し手をデータベース化して、短時間で大量高速計算を行って最善手を指します。一方、人間はそのようなことはできず、局面に応じて、指し手をある程度限定して考えます。

 

以下に、平成28年度 情報通信白書の一部をご紹介します^-^


ア 第一次人工知能ブーム
第一次人工知能(AI)ブームは、1950年代後半~1960年代である。コンピューターによる「推論」や「探索」が可能となり、特定の問題に対して解を提示できるようになったことがブームの要因である。冷戦下の米国では、自然言語処理による機械翻訳が特に注力された。しかし、当時の人工知能(AI)では、迷路の解き方や定理の証明のような単純な仮説の問題を扱うことはできても、様々な要因が絡み合っているような現実社会の課題を解くことはできないことが明らかになり、一転して冬の時代を迎えた。


イ 第二次人工知能ブーム
第二次人工知能(AI)ブームは、1980年代である。「知識」(コンピューターが推論するために必要な様々な情報を、コンピューターが認識できる形で記述したもの)を与えることで人工知能(AI)が実用可能な水準に達し、多数のエキスパートシステム(専門分野の知識を取り込んだ上で推論することで、その分野の専門家のように振る舞うプログラム)が生み出された。日本では、政府による「第五世代コンピュータ」と名付けられた大型プロジェクトが推進された。しかし、当時はコンピューターが必要な情報を自ら収集して蓄積することはできなかったため、必要となる全ての情報について、人がコンピューターにとって理解可能なように内容を記述する必要があった。世にある膨大な情報全てを、コンピューターが理解できるように記述して用意することは困難なため、実際に活用可能な知識量は特定の領域の情報などに限定する必要があった。こうした限界から、1995年頃から再び冬の時代を迎えた。


ウ 第三次人工知能ブーム
第三次人工知能(AI)ブームは、2000年代から現在まで続いている。まず、現在「ビッグデータ」と呼ばれているような大量のデータを用いることで人工知能(AI)自身が知識を獲得する「機械学習」が実用化された。次いで知識を定義する要素(特徴量11)を人工知能(AI)が自ら習得するディープラーニング(深層学習や特徴表現学習とも呼ばれる)が登場したことが、ブームの背景にある。


エ これまでの人工知能ブームをふりかえって
過去2回のブームにおいては、人工知能(AI)が実現できる技術的な限界よりも、社会が人工知能(AI)に対して期待する水準が上回っており、その乖離が明らかになることでブームが終わったと評価されている。このため、現在の第三次ブームに対しても、人工知能(AI)の技術開発や実用化が最も成功した場合に到達できる潜在的な可能性と、実現することが確実に可能と見込まれる領域には隔たりがあることを認識する必要がある、との指摘がある12。例えば、ディープラーニングによる技術革新はすでに起きているものの、実際の商品・サービスとして社会に浸透するためには実用化のための開発であったり社会環境の整備であったりという取組が必要である。実用化のための地道な取組が盛んになるほど、人工知能(AI)が社会にもたらすインパクトも大きくなり、その潜在的な可能性と実現性の隔たりも解消されると考えられる。


10 本パートは、松原、前掲および松尾、前掲を参考にしている。
11 対象を認識する際に注目すべき特徴は何かを定量的に表すこと。ディープラーニング以前は人間の手で特徴量を設計していたが、ディープラーニングによって画像認識や音声認識などでコンピューターが自ら特徴量をつくりだすことが可能となった。
12 松尾、前掲、pp.6-9

平成28年版 情報通信白書