管理間のトレードオフとは何か?①~技術士 総監部門~

前回の記事で、総監の課題は管理間のトレードオフ(相反)であり、課題解決=管理間のトレードオフの改善・調整という話をさせて頂きました。

今回は「管理間のトレードオフって何?」というところを解説したいと思います。

トレードオフを辞書で引くと、


トレードオフとは、何かを達成するために別の何かを犠牲にしなければならない関係のこと。いわゆる「あちら立てれば、こちらが立たぬ」に相当する。 たとえば、在庫管理にはトレードオフがつきまとう。製品の在庫を減らすと、顧客の需要に答えられず、販売機会を逃す。逆に、製品在庫を増やすと、売れ残りが生じ、無駄に保管場所をとったり、余計な費用がかかる。

コトバンク

とあります。日常生活を送っていると、トレードオフの連続ではないでしょうか?

 

身近な例としては、

会社の飲み会(社員間のふれあい)⇔家族とのふれあい

お酒(リラックス)⇔貯金

など、他にもいろいろあると思います。

 

この引用箇所の「何か」のところを5つの管理の1つを当てはめてみると考えやすいですね。

5つの管理のトレードオフを考えてみる上で、大切なことは5つの管理、それぞれがどういう志向(目指す方向性)があるかを理解することです。

 

以前の記事  『総合技術監理 キーワード集 2019』 ~総合技術監理の技術体系と範囲, 総合技術監理における総合管理技術①~ をご参照ください。

 

この記事の中で、青本とキーワード集に基づき、以下のとおり、各管理の志向をご紹介しました。

経済性管理・・・品質・納期・コスト(QCD)のバランス

人的資源管理・・・人の活用=人の能力開発、人の能力発揮

情報管理・・・情報の活用=情報の収集・伝達・意思決定、セキュリティ

安全管理・・・安全性の確保

社会環境管理・・・外部環境負荷低減

 

これらを踏まえて、今回は、経済性管理と(それ以外の)4つの管理のトレードオフ事例を考えてみましょう^-^

いかがでしょうか?以下に一例をご紹介します。これ以外にも多々ありますので、ご自身の業務を基にいろいろと考えてみると、総監の理解向上につながっていきます。トレードオフの改善・調整策の例も書いてみました。

 

管理① 管理②

管理①と管理②のトレードオフ事例⇒改善・調整策

経済性管理 人的資源管理

タイトな工程を遵守するためには、技術者のスキルアップが必要不可欠。しかし、スキルアップに必要な教育時間を取っていると工程に遅れが生じてしまう。

工程管理技術者への教育トレードオフ

⇒総合的かつ俯瞰的な分析を行う。具体的には、人的資源管理の視点からOJTとOFF-JTを効果的に組み合わせる。また、情報管理の視点から、情報を活用してその効果をフォローアップし、PDCAサイクルを回していく。

経済性管理 情報管理

タイトな工程を遵守するためには、プロジェクト担当者間の迅速な情報共有が必要。しかし、情報共有のスピードアップを図ろうとすると、機密情報が漏洩してしまうリスクが高まり、漏洩事故が発生すると工程に遅延が生じてしまう。

工程管理情報のセキュリティのトレードオフ

総合的かつ俯瞰的な分析を行う。具体的には、情報管理の視点から、機密情報レベルを区分し、そのレベルに応じて情報の取り扱方針を定める。また人的資源管理の視点から、情報セキュリティ研修を行い、情報管理の教育を行う。

経済性管理 安全管理

プロジェクト予算の上限が厳しく定められている中、現場の安全を十分に確保しようとすると、予算オーバーとなってしまう。しかし、予算の範囲内での安全対策では、十分な安全が確保できず、事故が発生し、プロジェクトが遅延もしくは中止となるリスクが生じる。

コスト管理安全確保トレードオフ

総合的かつ俯瞰的な分析を行う。具体的には、情報管理の視点から、安全方策に係る最新かつ経済的な技術情報を収集する。また、人的資源管理の視点から、現場技術員に安全教育を行い、ハードに頼りすぎない安全対策を図ることで、コスト縮減を実現する。

経済性管理 社会環境管理

プロジェクトの完了時期が厳しく定められている現場において、周辺環境に配慮すると工程遅延・コスト増となる。しかし工程遵守を優先すると、環境への配慮に不備が出やすくなり、地元住民の反対運動が高まり、プロジェクトが遅延・中断するリスクが高まる。

工程管理外部環境負荷低減のトレードオフ

総合的かつ俯瞰的な分析を行う。具体的には、情報管理の視点から、周辺事前調査及び環境配慮方策に係る情報収集を行い、最適な必要最小限の対応策を立案する。また、経済性管理の視点から、CPMによる工程管理を行うとともに、定期的な見直しを行う。

 

あくまで一例ですが、皆さんの頭の体操の一助となれば幸いです。

次回は、経済性管理以外の4つの管理間のトレードオフの解説を行いたいと思います。

皆さんの業務内容の詳細作成や筆記試験対策のお役に立てれば幸いです。

 

よろしければ、皆さんが考えたトレードオフ事例およびその改善・調整策を教えてください。

お問い合わせからどうぞ。ご了解頂ければ、このブログで紹介させて頂き、一緒に勉強させて頂きたいと思います^-^