総合技術監理部門 過去問解説 情報管理 国際出願~必須科目(択一式)H30-Ⅰ-1-19

今回も、技術士第二次試験 総合技術監理部門の択一式 平成30年度の過去問を見ていきたいと思います。


平成30年度技術士第二次試験 総合技術監理部門 必須科目(択一式)

情報管理 知的財産権 からの出題ですね。

この問題も、一見特許に馴染みがないと正答が難しそうに見えますが、一般常識をベースに想像力を働かせると、正答できる確率が高まると感じています。

選択肢を読みながら、そのシチュエーションを想像してみると良いです。

①・・・「1通だけ提出すれば良い」というところが気になる。。。

②・・・自国の特許庁に出願すれば、全てPCT加盟国に出願したことと同じ扱いとしても良さそう。出願しやすくするためであり、出願=特許査定ではないのだから。

③・・・母国語で行えることにより、出願しやすくなるのでOKでは。

④・・・先行技術の有無を確認することは必要なこと。

⑤・・・自国で認められたからといって、すべてのPCT加盟国で特許権が認められるのはおかしいのでは?特許の査定基準を各国で統一するのは、各国の価値観・歴史観等の相違から困難では?

といった感じで想像してみた結果、①か⑤が怪しいと思えます。消去法を使うことで2択に絞れます。

では①と⑤、どちらがより怪しいorおかしいか?①は1通だけど、加盟国間で情報共有すれば問題なさそう。

ということで、⑤が残ります。

ちなみに正答は⑤となります。

当たり前ですが、本番では、分かる問題と分からない問題が出題されます。分かる問題を確実に正答しつつ、分からない問題を如何にして正答するか、または如何にして正答確率を上げるか、これまで得た知識(≓一般常識的なもの)と想像力を活用して戦略的に臨むことが重要です。

 

PCT国際出願制度の概要(特許庁HP)を以下に引用しますので参考にしてください。

PCT国際出願制度の概要

特許協力条約(PCT:Patent Cooperation Treaty)に基づく国際出願とは、ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度です。

多くの国に対してそれぞれ出願する場合、手続は非常に煩雑になります。

ある発明に対して特許権を付与するか否かの判断は、各国がそれぞれの特許法に基づいて行います。したがって、特定の国で特許を取得するためには、その国に対して直接、特許出願をしなければなりません。

しかし、近年は、経済と技術の国際化を背景として、以前にも増して、多くの国で製品を販売したい、模倣品から自社製品を保護したい、などの理由から特許を取りたい国の数が増加する傾向にあります。同時に、そのすべての国に対して個々に特許出願を行うことはとても煩雑になってきました。また、先願主義のもと、発明は、一日も早く出願することが重要です。しかし、出願日を早く確保しようとしても、すべての国に対して同日に、それぞれ異なった言語を用いて異なった出願願書を提出することは、ほぼ不可能といえます。

PCT国際出願日は、各国の出願日になります。

PCT国際出願は、このような煩雑さ、非効率さを改善するために設けられた国際的な特許出願制度です。PCT国際出願では、国際的に統一された出願願書(PCT/RO101)をPCT加盟国である自国の特許庁に対して特許庁が定めた言語(日本国特許庁の場合は日本語若しくは英語)で作成し、1通だけ提出すれば、その時点で有効なすべてのPCT加盟国に対して「国内出願」を出願することと同じ扱いを得ることができます。つまり、日本人の場合、日本特許庁に対して日本語若しくは英語で作成した国際出願願書を1通だけ提出すれば、それによって国際出願に与えられた国際出願日が、それらすべての国においての「国内出願」の出願日となります。

PCTでは、国際調査、国際予備審査を利用することができます。

また、PCTは、出願の手続を簡素化するだけでなく、PCT国際出願に独自の制度も用意されています。

たとえば、国際出願をすると、出願した発明に類似する発明が過去に出願された(公知となった)ことがあるかの調査(国際調査)が、すべての国際出願に対して行われます。その際には、その発明が進歩性、新規性など特許取得に必要な要件を備えているか否かについて審査官の見解も作成されます。もちろん、それらの結果は、出願人に提供されますので、出願人は、自分の発明の評価をするための有効な材料として利用することができます。さらに、出願人が希望すれば、特許取得のための要件について予備的な審査(国際予備審査)を受けることもできます(各国が行う特許付与のための審査ではありません)。

これらの制度を利用することで、特許取得の可能性を精査し、緻密に厳選した国においてのみ手続を係属させ、コストの効率化、適正化が可能となります。

特許を付与するか否かの判断は各国の実体審査となります。

注意すべき重要な点があります。つまり、PCT国際出願は、あくまで国際的な「出願」手続であるため、国際出願の発明が、特許を取得したい国のそれぞれで特許として認められるかどうかは、最終的には各国特許庁の実体的な審査に委ねられています。

そこで、PCT国際出願の最後の手続は、国際出願を各国の国内手続に係属させるための手続となります。PCT国際出願が国内手続に係属された後は、PCT国際出願もそれぞれの国の国内法令によって処理されます。この「各国の国内手続に係属させる」手続をPCTでは、「国内移行手続」と呼びます。

この国内移行手続を行うにあたり、優先日から30ヶ月の期限が満了する前に、権利を取りたいPCT加盟国が認める言語に翻訳した翻訳文をその国の特許庁に提出し、その国が求める場合には手数料を支払う必要があります。

[更新日 2016年3月4日]

 

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