技術士 建設部門-都市及び地方計画 平成30年度過去問Ⅱ-2-1 市街地整備手法 の解説

今回は、建設部門-都市及び地方計画 平成30年度の選択問題Ⅱ-2-1を見ていきます。


平成30年度技術士第二次試験問題[建設部門] 9-3都市及び地方計画[選択科目Ⅱ]

 Ⅱ-2は2問中1問を選択します。2019年度も同じ形式となります。専門とする事項が市街地整備(特に市街地再開発事業)の人にとっては割と書きやすい問題だと思います。

 Ⅱ-2は600字×2枚ですので、(1)~(3)それぞれ400字を目途にバランス良く書けると良いです。

機動的な街区再編に向けた土地・建物一体型の市街地整備手法活用マニュアル (国土交通省HP)

を参考にすると良いです。

 論文を書き始める前に、25分程度は論文構成(骨子)を考える時間を取りましょう。本番では開始5分もしないうちに、書き始める人がいて気になるかも知れませんが、最もやってはいけないのは「論文構成が決まらないまま書き始めること」です。この致命的欠点は合格論文になりにくいことと、時間が足りなくなることです。

 また、論文構成を問題文の空きスペースに書き残しておきましょう。これがあれば、論文再現が容易になります。

 以下に、論文構成(骨子)の一例(3パターン)を示します。「これ以外にも○○といった視点がある。これよりも△△と書いた方が良い。」といったところが出てくると、試験勉強が順調に進んでいるといえます^-^

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(1)土地・建物一体型の市街地整備を行うことで、

  敷地を共同化し、高度利用することにより、公共施設用地を生み出すことができる。

  高度利用で新たに生み出された床(保留床)を処分し事業費に充てることができる。

  土地と建物を別々に整備する場合と比べて、短期かつ効率的に整備することができる。

  零細・小規模権利者にも権利床を与えることができ、コミュニティを維持しやすい。

 

 

立体換地制度を活用した土地区画整理事業

(2)特徴

地権者の多様な土地利用ニーズに対応することで円滑な合意形成のもと、民間事業者主導で迅速に都市開発を行う場合に適した手法。

地権者の合意を前提とした手法であり、空地混じりで権利者数の少ない小規模な地区での施行が考えられる。

①個人、組合施行が主で、都市計画決定を経ず迅速な事業施行が可能。

②関係者間の合意可能な範囲での事業であり、施行地区の設定や換地計画等について柔軟な対応が可能な反面、施行権能(強制力)は期待できない。

③事業において保留床に類する床の確保が可能であり、通常の区画整理であれば収支が成立しない地区でも事業採算性が期待可能。

④権利者は施行者が建築、取得する建築物の権利を取得することになるため、 建築計画や登記等の負担が発生しないとともに、法定事業として実施されるため、不動産取得税が非課税で、登録免許税も免除。

⑤建築物の建築を地権者ではなく施行者が担うため、街にとって必要な都市機能を立体換地建築物に導入したり、景観に優れた建築物を誘導したりすることによるまちづくり効果も期待可能。 

(2)実施手順

①あらかじめ、地権者、民間事業者など関係者の間で、換地計画、立体換地建築物の計画について 検討、調整を行い、関係者間で合意

②当該合意に基づき、区画整理事業に関する事業認可、又は組合設立認可を取得

③立体換地を希望する地権者からの申出を受け、立体換地対象地権者を最終確定

④当該申出者の確定を受けて、換地計画(清算金明 細書を除く)の認可を取得

⑤立体換地建築物の建築を含め、土地区画整理事業を実施

⑥土地区画整理事業に係る工事の完了をもって換地計画(清算金明細書を含む)の変更認可を取得

⑦換地計画に基づき、換地処分

(3)留意事項

権利者全員同意が原則必要となることから、建物が建て込み権利関係が輻輳した地区や多数の地権者が存する広いエリアでの施行では難易度が高い。

床需要の見通しについて綿密に事前調査を行い、保留床等が過大・過小とならないようにする。

補助制度が手薄であることから、資金計画を綿密に立てる必要がある。

土地区画整理事業と市街地再開発事業の一体的施行

特徴

土地区画整理事業、市街地再開発事業それぞれの特長を活かしながら、制度的に体系立った枠組みのもとに、同意型ではなく縦覧型で基盤整備や高度 利用を確実に実施することが可能な手法。

中心市街地、駅前地区や密集市街地など、広い範囲で不足する基盤の整備 が必要な地区を対象に土地区画整理事業を行いつつ、土地の有効高度利用を 併せて進めていくことが必要な地区での施行が考えられる。

広いエリアを対象に全面的な基盤の整備と土地の有効高度利用を一体的に行い、市街地の整備水準を大きく向上させることが可能

一部に反対地権者がいる場合でも、施行者権能により事業を実施するこ とが可能

区画整理、再開発それぞれの強みを活かすことが可能であり、権利関係が輻輳した地区、権利者が多い地区でも事業実施が可能

実施手順

①市街地再開発事業にかかる都市計 画決定に即し、土地区画整理事業の事業計画において、市街地再開発事業区等として再開発を実施する地区を位置づけ

②土地区画整理事業の事業計画に基づき、再開発事業区等への換地を 希望する地権者の申出を受け付け

③再開発事業区等に換地される地権 者の敷地を特定した上で、換地計画の認可を取得

④換地計画に基づき、再開発事業区 等の地区内の土地を特定仮換地と して仮換地指定

⑤特定仮換地の指定を受けて、再開発事業区等を施行区域として市街 地再開発事業の事業認可を取得

⑥市街地再開発事業と土地区画整理 事業とをそれぞれに施行

留意事項

区画整理、再開発双方に都市計画、事業計画等の法定手続が必要であり、手続調整の難易度が高いとともに事業には長期間を要する。

区画整理と再開発事業とが別々の事業として実施され、施行者も異なるため、事業調整や地権者対応など事業執行・進行管理の難易度が高い。

区画整理事業については、それ自体の収支が成立せず、施行者である 地方公共団体等の単費負担が生じること

個別利用区制度を活用した市街地再開発事業

特徴

立体換地制度や一体的施行と同様に、個別利用と高度利用の両立を可能とする市街地整備手法である。

市街地再開発事業の権利変換により権利の再編を図るため、輻輳した権利関係への対応が可能であり、また 1 事業で行うことにより、一体的施行に比べ、手続き的にも機動的な事業実施が可能な手法である。

実施手順

①市街地再開発事業の都市計画決定

②個別利用区を定めた市街地再開発事業の事業計画認可を取得

③地権者は、個別利用区に権利変換されるべき旨を申出

④施行者は、個別利用区へ宅地が与えられるべき地権者の宅地(指定宅地)を指定

⑤指定宅地を個別利用区内の宅地へ権利変換する内容を定めた権利変換計画認可を取得

⑥施設建築物及び個別利用区内の宅地の整備(建物を個別利用区へ移転する場合は、 個別利用区の宅地の整備完了後に地権者が実施)

⑦すべての市街地再開発事業の整備が完了した後、組合解散及び清算を実施

留意事項 個別利用については一定の要件がある(例:申出の目的が一定の 既存建築物の存置又は移転に限られる等)ことから、権利者の土地利用意向の反映には応じられない部分もある。
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