技術士 建設部門-都市及び地方計画 平成30年度過去問 Ⅲ-2 復興まちづくり計画 の解説

今回は、建設部門-都市及び地方計画 平成30年度の選択問題Ⅲ-2を見ていきます。


過去問題(第二次試験)09建設部門 0903都市及び地方計画 平成30年度(日本技術士会HP)

この問題は、2016年12月に発生した新潟県糸魚川市の市街地大火、その後の復興まちづくりを題材にしています。

国交省等で公表されている資料をベースに論文構成(骨子)を考えても良いですし、ご自身の実務経験等を踏まえて自然体で考えても良いかと思います。

 

まず問題文をしっかり読んで、与条件や問われていることを確認してください。

与条件

 ・大規模な市街地大火が発生した、人口減少・少子高齢化の進む人口数万人の地方都市

 ・担当責任者の立場で書く

問われていること

 (1)まちづくり上の課題※

    ※昨年度までは「課題解決能力」でしたが、今年度は「問題解決能力」「課題遂行能力」となっていますので、過去問を解くときは「課題」=「問題」(解決すべき事柄)と捉えると良いです。

 (2)課題※解決のための具体的方策

 (3)想定される負の側面と対応方策

をじっくり確認して、25分程度を使って論文構成(骨子)を作成します。これがそのまま再現論文の骨子として(口頭試験対策として)使用できます^-^

(3)においては、資質能力として求められている評価、コミュニケーションを意識して解答できると良いですね。

以下に論文構成(骨子)の一例を示します。

 

 

(1)問題(課題)

被災地は大規模なため、土地・建物の権利者が多く、権利関係が複雑で、権利者の意向がばらばらである。早期の生活・生業再建を求める人がいる中で、復興まちづくりの方向性等について合意形成が難航する可能性が高い。


復興まちづくりには、数年以上を要することが多く、その間に被災者・権利者の意向が変わったり、権利者土地・建物の需要等が変動したりするが、当初段階で適切に想定することは困難。


復興まちづくりにおいて、被災前と同規模若しくはそれ以上の規模としてしまう傾向が見られるが、被災以降も、人口減少・少子高齢化は進行するため、過大規模となる可能性が高い。

(2)具体的方策

問題(課題)解決のため、土地区画整理事業を導入することとし、迅速性、確実性、柔軟性の視点から以下の具体的な方策を行う。

1)速やかな復興を可能とする計画(迅速性)

・早期にまちづくりの方向性や計画策定のスケジュールを明示

・優先順位を見極め、より緊急性、必要性の高い事項に注力

2)実現可能な計画(確実性)

・事業期間や費用を踏まえた現実的かつ実効性の高いまちづくりの計画

・実現に向けた具体的な道筋や取り組みや生活再建

・事業再生の意向把握や調整

3)状況に応じた対応が可能な計画(柔軟性)

・具体的な事業の実施計画との並行的な作業

・住民等の生活再建とのバランスを考慮した柔軟な計画

(3)●負の側面→対応方策

●人口数万人の地方都市のため、区画整理等の市街地整備の実績が少なく、まちづくりに精通した行政の担当者も少ない。

→国や都道府県との連携、(復興事業の実績・ノウハウのある)UR都市機構の有効活用

人口減少・少子高齢化に伴い、税収減・社会保障費増の状態が続いており、復興まちづくりのための財源が不足。

→国や都道府県の補助金や交付金の活用、官民連携による民間のノウハウ・資金を活かした復興事業

被災前の道路幅が狭く、延焼の危険性を低減するために、道路・公園整備等が必要だが、都市のスポンジ化が進行していて低未利用地が多く、土地・建物の相続が行われていない場合も多く、権利者等との合意形成に時間を要する。

→柔軟な土地区画整理事業の活用(地区界、道路線形・幅員、宅地形状を柔軟に設定、原位置換地の原則に囚われず、権利者の要望や土地利用の需要に柔軟に対応)、権利者等を参加させてのまちづくり勉強会・ワークショップの実施

 

糸魚川大規模火災の経験をふまえた、 今後の復興まちづくり計画の考え方(国交省HP)も参考にすると良いです。

他の切り口でのアプローチもありますし、国交省の公表資料を参考にしつつも、ご自身の実務経験に裏打ちされた、ご自身の言葉で書くと、試験官に響く良い論文(確実なA判定)になると思います。

 

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