今回は、前回に引き続き、管理間のトレードオフについて解説していきたいと思います。
復習したい人は前回をご確認ください。
前回、経済性管理と他の4つの管理とのトレードオフの事例を紹介しました。
どちらかを立てようとすると、どちらかもう一方が立たなくなる状況をトレードオフといいます。
総監(を必要とする)業務の適合条件は2つあると考えます。
その1・・・業務にこのトレードオフがあること(=課題)およびこれを抽出すること
その2・・・総合的かつ俯瞰的な視点から、このトレードオフの改善・調整の方策を提案し、実行すること
以下に、(前回の続きで)今回は人的資源管理と(経済性管理以外の)3つの管理間のトレードオフの事例を考えてみたいと思います。
各管理の志向(目指す方向性)をまずおさらいしたうえで、ご自身の業務を基に少し考えてみてください。
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いかがでしょうか?
前回同様、以下に一例をご紹介します。これ以外にも多々ありますので、ご自身の業務を基にいろいろと考えてみると、総監の理解向上につながっていきます。トレードオフの改善・調整策の例も書いてみました。
管理① | 管理② |
管理①と管理②のトレードオフ事例⇒改善・調整策 |
人的資源管理 | 情報管理 |
プロジェクトを緻密に品質管理しようとすると、多大な情報の管理・分析が必要となり、ただでさえ業務量が多い担当者の負担が更に増すこととなり、モチベーションの低下が懸念される。しかし、担当者のモチベーションに配慮して情報の管理・分析の項目や頻度を少なくすると十分な品質確保に係る情報管理ができなくなる。 →人の能力発揮 と 情報の活用のトレードオフ ⇒総合的かつ俯瞰的な分析を行う。具体的には、情報管理の視点から、品質管理に大きな影響を与える管理項目を精査し、必要十分かつ最小限な管理項目とする。また人的資源管理の視点から、研修の場を設け、プロジェクトの品質管理の重要性を説き、理解を高めさせることで、担当者が能動的かつ主体的に取り組めるようにする。 |
人的資源管理 | 安全管理 |
現場での安全管理が煩雑な業務において、安全確保を着実に行うためには、数多くの制約条件を課する必要があり、技術員の負担感が増し、モチベーションが低下し、不注意等による事故が発生するリスクが生じる。しかし、技術員の負担軽減に配慮して制約条件を減らしてしまうと、安全確保が不十分となるリスクが生じる。 →人の能力発揮 と 安全確保のトレードオフ ⇒総合的かつ俯瞰的な分析を行う。具体的には、情報管理の視点から、現地精査を行い必要な制約条件を精査し、制約条件が冗長にならないようにする。また、人的資源管理の視点から、現場技術員に安全教育を行い、制約条件の必要性を理解させ、主体的に制約条件を遵守させるようにする。 |
人的資源管理 | 社会環境管理 |
現場の近傍に希少種動物が生息しており、関係法令を遵守し、環境に慎重な配慮が求められるプロジェクトにおいて、経験の少ない技術者は萎縮してしまい、十分な能力発揮ができなくなる恐れが生じる。しかし、技術者の自主性に任せてしまうと、関係法令の遵守漏れが生じたり、希少種動物への何らかの悪影響を与えたりしてしまう恐れが生じる。 →人の能力発揮 と 外部環境負荷低減のトレードオフ ⇒総合的かつ俯瞰的な分析を行う。具体的には、情報管理の視点から、情報収集・分析を行い、関係法令及び環境配慮方策に係る図解資料やチェックリストを作成し、技術者が容易に対処・チェックできるようにする。また、人的資源管理の視点から、関係法令及び環境配慮方策に係るOFF-JTやOJTを定期的に行うことで、技術者が能力発揮しやすい実務環境を整える。 |
今行っている業務においても、管理間のトレードオフがないかを考えてみると良いでしょう。日常業務においても総監の視点を意識することで、仕事をしながら総監の勉強をすることができます。総監の勉強というよりも、今まで無意識で行っていたことを意識するといった方が正確かも知れません。
今回の記事が少しでも総監理解の一助になれば幸いです。