技術士 建設部門-都市及び地方計画 平成30年度過去問Ⅱ-2-2 緑の基本計画の見直し の解説

今回は、建設部門-都市及び地方計画 平成30年度の選択問題Ⅱ-2-2を見ていきます。

過去問題(第二次試験)09建設部門 0903都市及び地方計画 平成30年度(日本技術士会HP)

まず問題文をしっかり読んで、与条件や問われていることを確認してください。

与条件

 ・人口減少・少子高齢化が進み、財政制約が高まりつつある都市

問われていること

 (1)課題

 (2)手順とその内容

 (3)実効性を高めるための工夫又は留意すべき事項

となります。

問題文を熟読した後は、問われていることを表にして、25分前後をかけて論文構成(骨子)を作成しましょう。

作成した後は、題意に沿っているかを入念にチェックします。これが終わってから、論文を書き始めてください。

 

※まずは何も見ずに作成してみると良いです。このことにより、自身が理解できている(書ける)こと、理解できていない(書けない)ことが明確に分かります。本番の筆記試験前にこれをやらないと、自身の実力が分からないまま、本番を迎えてしまい、A判定が得られなかった場合、その原因もよく分からない状況に陥ってしまいます。

 

生物多様性に配慮した 緑の基本計画策定の手引き (H30.4国土交通省)を参考に、論文構成(骨子)の一例を以下に示します。

(1)課題

①都市では、人口の集中により宅地化が進み、樹林地や農地が限られることから、多様な生物が生息・生育できる空間が極めて少なくなっている。多様な生物の生息・生育環境となる緑地の保全・創出の推進を図る必要がある。


②現在活用されている緑の基本計画の多くは、生物多様性の重要性が強く認識される以前に策定されており、緑の基本計画における生物多様性への配慮はまだまだ十分とはいえない。


③財政制約が高まりつつある中、緑とオープンスペースの確保の優先順位が下がってしまい、十分に行われない恐れがある。緑とオープンスペースの充実により、都市は防災・減災、環境及び地域振興の視点で恩恵を受けることができるが、この恩恵を喪失してしまうことになる。

(2)手順と内容

①策定方針の決定

 生物多様性政策に関わる部局の確認、主担当部局の取組方針の把握

 関連計画を踏まえた緑の基本計画の位置づけ

②現況調査

 環境部局の調査結果の確認

③現状分析と課題

 現況調査の結果を踏まえての分析・評価

 自然的条件と社会的条件の両方の視点から、総合的な評価を行うことで、地域ごとに固有の課題を見出し、 目標を設定するための土台とする

④基本理念・基本方針の策定

 生物多様性を保全することの重要性を確認し、基本理念に明記

 計画全体に係る基本方針のなかにも生物多様性の保全や活用を位置づけ

⑤施策体系

 施策体系の柱毎に、生物多様性の保全や活用に関してどのような施策が考えられるか検討

⑥緑地の配置方針

 中核地区、拠点地区、緩衝地区の選定

 周辺の地方公共団体との協力ネットワークの構築

⑦施策

 緑地保全、緑地創出、緑地活用、緑地の普及啓発に関する施策

⑧進捗管理

 PDCAを回す進捗管理体制、進捗管理の基準となる指標の選定

(3)工夫・留意事項

①財政負担緩和による実効性向上

・市民・民間企業の意見も汲み取れる体制

・市民団体等の他主体による既存調査結果の活用

→これにより、市民等の参画を可能とし、財政負担を緩和

②仕組み構築による実効性向上

・行政の関連部局等の役割分担・連携の整理

・計画を審議する場の設定(有識者や市民団体の意見反映)

・緑の基本計画の位置づけ (関連計画との兼ね合い)

・都道府県の生物多様性地域戦略等との連携

③教育・評価による実効性向上

・行政担当職員、市民・民間企業等に向けた教育・啓発の場(セミナー、研修、ネット情報)を設ける

・模範的な取組に対して、それを表彰・評価し、共有し学ぶようにする。

(3)の工夫・留意事項については、求められている資質能力のうち、マネジメントコミュニケーションリーダーシップを意識して書けると良いです。

 特に都市及び地方計画科目においては、多様な関係者間との協議調整を行いながら、事業等を進めていくことになりますので、無意識のうちにマネジメント、コミュニケーションおよびリーダーシップを実行しています。そこを意識化・見える化してみると良いです。

Image by Mabel Amber, still incognito… from Pixabay