【令和8年度 技術士二次試験】建設部門 必須科目Ⅰ-2を振り返る①―グリーンインフラから考える「観点・問題分析・技術課題」

令和8年度の技術士第二次試験を受験された皆さん、筆記試験、大変お疲れさまでした。

今回は、建設部門の必須科目Ⅰ-2について振り返っていきます。

テーマは「グリーンインフラ(GI)」でした。

グリーンインフラに関する知識はもちろん重要ですが、今回特に注目したいのは、設問(1)で求められた「多面的な観点から3つの技術課題を抽出する」という部分です。

「観点とは何を書くのか?」
「問題と課題をどう区別するのか?」
「3つの技術課題をどう展開すれば、多面的になるのか?」

こうした点は、今回の問題だけでなく、今後の必須科目Ⅰの論文対策にもつながります。

今回はYouTube動画でも解説していますので、動画とあわせて振り返ってみてください。

令和8年度 建設部門Ⅰ-2は「グリーンインフラ」がテーマ

今回のⅠ-2では、気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化や、生物多様性の損失などを背景として、グリーンインフラを活用した社会づくりが取り上げられました。

グリーンインフラとは、単なる「緑化」ではありません。

国土交通省の「グリーンインフラ推進戦略2030」では、自然の多様な機能を活用した社会資本として位置づけられ、持続可能で魅力ある国土・都市・地域づくりや、ウェルビーイングの向上への貢献が期待されています。

そのため答案でも、「緑を増やす」「自然を守る」といった環境面だけにとどまらず、防災・減災、生物多様性、地域社会、維持管理など、多面的に捉えていくことがポイントになります。

設問(1)では「観点→問題分析→技術課題」を意識する

今回、特に注意したいのが設問(1)です。

問題文では、

「多面的な観点から3つの技術課題を抽出」
「それぞれの観点を明記」
「解答の際には必ず観点を述べてから技術課題を示せ」

と求められています。

つまり、いきなり技術課題を書くのではなく、

観点 → 背景・問題 → 技術課題

という流れを意識することが大切です。

まず「観点」は、どのような価値や視点から問題を見るのかを示します。

次に、その観点から現在どのような問題があり、何が原因となっているのか、どのような影響が生じているのかを整理します。

そのうえで、問題を解決するために「どの方向へ改善していく必要があるのか」を技術課題として提示します。

ここで注意したいのは、技術課題と具体的な解決策を混同しないことです。

設問(2)では、設問(1)で抽出した技術課題のうち最も重要なものを選び、「複数の解決策」を示すことが求められています。

したがって設問(1)では、具体策を細かく書き込むよりも、まず問題を分析したうえで「解決すべき方向性」を明確にすることが重要と言えるでしょう。

3つの観点をどう設定するか

例えば今回のグリーンインフラについては、次のような3つの観点が考えられます。

① 防災・減災と自然環境の調和という観点

豪雨等の激甚化・頻発化が進む一方、都市化によって雨水の浸透・貯留機能が低下し、内水氾濫等のリスクが高まっています。

そこで、「自然の多様な機能を活かした流域・地域の防災機能の向上」を技術課題として設定することが考えられます。

雨庭、緑地、湿地などが持つ貯留・浸透機能を活用しながら、従来型インフラとも組み合わせ、防災・減災と自然環境の保全を両立していく方向性です。

② 生物多様性・自然環境の保全という観点

社会資本整備や土地利用の変化によって、生物の生息・生育環境が分断されることがあります。

個々の緑地を整備するだけでは、生態系としての連続性や機能を十分に確保できない場合もあります。

そこで、「生態系ネットワークを形成するグリーンインフラの実装」を技術課題とすることが考えられます。

河川、公園、道路、都市緑地などを面的につなぎ、地域固有の生態系を保全・再生していく視点です。

③ 地域との共生・持続的な管理という観点

グリーンインフラは、造って終わりではありません。

自然を活用する以上、植生や水環境などは時間とともに変化します。そのため、整備後も継続的に状態を把握し、必要に応じて管理方法を見直していく必要があります。

一方で、行政だけで長期的な維持管理を担うことには限界もあります。

そこで、「多様な主体との協働による持続可能なGI管理体制の構築」を技術課題として設定することが考えられます。

地域住民、行政、民間事業者、専門家などが関わりながら、モニタリング、評価、管理方法の見直しを繰り返す「順応的管理」につなげていく考え方です。

「多面的」とは、同じ問題を言い換えることではない

必須科目Ⅰの答案を考える際、ぜひ意識していただきたいのが、「多面的」という言葉です。

3つの技術課題を書いていても、実質的には同じ問題を少しずつ言い換えているだけ、という答案になってしまうことがあります。

今回であれば、

・防災・減災
・生態系
・管理・協働

というように、切り口そのものを変えることで、多面的な分析であることが採点者にも伝わりやすくなります。

そして、それぞれについて、

観点 → 背景・問題 → 技術課題

のつながりを確認してみてください。

「なぜ、その技術課題が必要なのか」を説明できる状態になっていれば、設問(2)の解決策にも展開しやすくなります。

グリーンインフラを「緑化」だけで捉えない

今回の問題を振り返るうえでもう一つ大切なのは、グリーンインフラを単なる緑化施策として捉えないことです。

自然には、雨水の貯留・浸透、生物の生息・生育環境の形成、暑熱環境の緩和、良好な景観の形成など、さまざまな機能があります。

さらに、それらを地域づくりや防災、コミュニティ形成などと結び付けることで、一つの取組から複数の効果を生み出すことができます。

この「自然の多機能性をどう社会課題の解決につなげるか」という視点が、今回の問題を考えるうえで重要だったと言えるでしょう。

まとめ―自分の答案を「3つのつながり」で振り返ってみよう

今回の設問(1)を振り返る際には、単に「グリーンインフラについて何を書いたか」だけではなく、次の点を確認してみてください。

観点は最初に明記できていたか。
3つの観点は明確に異なっていたか。
背景・問題から技術課題へ論理的につながっていたか。

そして、グリーンインフラを単なる緑化としてではなく、防災・減災、生物多様性、地域社会、維持管理などを含む幅広い社会資本として捉えられていたかも振り返ってみるとよいでしょう。

試験が終わった直後は、「あそこを書けばよかった」「この表現はまずかったかもしれない」と気になるものです。

ただ、今の段階で大切なのは自己採点だけではありません。

今回の問題を材料として、「観点→問題分析→技術課題」という論文の組み立てを改めて確認することは、今後の技術者としての課題分析にも役立ちます。

動画では、今回の設問(1)について、具体例を交えながらもう少し詳しく解説しています。

ぜひ動画とあわせて、ご自身の答案を振り返ってみてください。