筆記試験、大変お疲れ様でした。
試験が終わると、「しばらく問題文は見たくない」という気持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。
ただ、記憶が残っているうちに自分の答案を少し振り返っておくことは、今後に向けた大切な一歩になります。
今回は、建設部門の必須科目Ⅰ-1について、設問4「技術者倫理・社会の持続性」を取り上げます。
設問4は答案の最後に位置するため、時間が足りなくなり、十分に書けなかったという方も少なくないと思います。一方で、何を書けばよいかをあらかじめ整理しておけば、比較的対応しやすい設問でもあります。
YouTube動画では具体的な骨子例を示しながら解説していますが、この記事では特に押さえておきたい考え方を整理してみます。
設問4では何が問われているのか
今回取り上げた必須科目Ⅰ-1では、設問4で次の2つの観点が明示されています。
- 技術者としての倫理
- 社会の持続性
まず大切なのは、この2つを混同せず、それぞれ何を問われているのかを整理しておくことです。
例えば、技術者倫理については、
「公益確保」「職責」「倫理的行動」「法令遵守」
といった視点が考えられます。
一方、社会の持続性については、
「環境保全」「将来世代への配慮」「持続的なインフラサービス」
などの視点が考えられます。
答案を書く際には、「倫理について1つ、持続性について1つ」というように整理すると、設問要求に対応した構成を作りやすくなるでしょう。
一般論でもよいが、問題のテーマと結び付けたい
設問4には、「前問(1)~(3)を業務として遂行するに当たり」とあります。
そのため、設問1~3で論じた内容を踏まえて記述することが基本です。
一方、これまでの答案を見ていると、設問1~3がしっかり書けていれば、設問4についてはある程度一般的な内容であってもA評価を得ている論文は多い印象です。
とはいえ、さらに一歩進めるのであれば、問題文のテーマと技術者倫理・社会の持続性を結び付けて書くことを意識してみてください。
今回のテーマは、「新技術・DXの活用によるインフラの価値向上」です。
そこで、単に、
「公衆の安全を最優先する」
「環境に配慮する」
と書くだけではなく、AIやDXを活用する場面を想定して具体化してみます。
「技術者倫理」はDXを使う技術者の責任まで踏み込む
例えば技術者倫理の観点では、次のような考え方ができます。
AIなどの新技術を活用する場合であっても、効率性や経済性だけを追求するのではなく、公衆の安全・健康・福利を最優先することが重要です。
AIが示した結果だから正しい、とそのまま受け入れるのではありません。
データの信頼性や判断根拠を技術者自身が確認し、最終的な技術的判断と責任を担うことが求められます。
また、DXでは大量のデータを扱いますので、個人情報や機密情報の適切な管理、AIの公平性や透明性への配慮も必要になるでしょう。
ここで大切なのは、「DXだから特別な倫理が必要」ということではなく、DXを使う場面でも技術者としての責任は変わらないということです。
新しい技術を使うほど、「誰が最終的に判断し、責任を負うのか」という視点を忘れないようにしたいところです。
「社会の持続性」は将来にわたるインフラサービスから考える
一方、社会の持続性については、少し視点を変えてみましょう。
DXによってインフラ管理が効率化されても、そのサービスを一部の人しか利用できないのであれば、社会全体にとって十分な価値向上とは言いにくいでしょう。
例えば、高齢者やデジタル技術に不慣れな利用者への配慮が必要です。
デジタル化を進めながらも、必要に応じて従来の手段を残すなど、デジタルデバイドを防ぐことが求められます。
また、目先の効率化だけでなく、
- 省エネルギー化
- インフラ設備の長寿命化
- 環境負荷の低減
- ライフサイクルコストの低減
といった視点から、将来世代にわたって安全・安心なインフラサービスを提供できるかを考えることも重要です。
「社会の持続性」という言葉は抽象的に見えますが、「今だけではなく将来も」「一部の人だけではなく社会全体に」という視点を持つと、答案に落とし込みやすくなると思います。
DXは「目的」ではなく「手段」と考える
今回の問題全体を考えるうえで、もう一つ意識しておきたいポイントがあります。
それは、DXそのものを目的にしないことです。
問題文で問われているのは、単にAI、IoT、BIM/CIMなどの技術を導入することではありません。
「新技術・DXの活用によって、インフラの価値をどう向上させるのか」が問われています。
例えばAIを導入したとしても、安全性や信頼性が低下してしまえば、インフラの価値向上にはつながりません。
効率化できても、デジタルデバイドによってサービスを受けにくい人が増えてしまえば、それも望ましい姿とは言いにくいでしょう。
技術ありきではなく、
「どのようなインフラ価値を実現したいのか」→「そのためにDXをどう活用するのか」
という順番で考えることが大切です。
これは設問4だけでなく、設問1~3を含めた答案全体にも通じる考え方です。
試験後の今だからこそ、自分の設問4を振り返ってみよう
試験が終わった直後は、正解を探すことに意識が向きがちです。
しかし、技術士第二次試験では、一つの「正解」を探すというよりも、問題文の要求を踏まえ、自分が技術者としてどう考えたのかを振り返ることに意味があります。
今回の設問4についても、
「技術者倫理と社会の持続性を書き分けられていたか」
「設問1~3の内容とつながっていたか」
「DXという問題テーマに即した具体性があったか」
「効率性だけでなく、安全・公益や将来世代まで考えられていたか」
という視点で、ご自身の答案を一度振り返ってみてください。
うまく書けなかったところがあっても、そこで終わりではありません。
「次に同じような設問が出たら、どう考えるか」を整理しておくことが、次のステップにつながります。
YouTube動画では、今回の必須科目Ⅰ-1について、設問4の骨子例を示しながら、技術者倫理と社会の持続性をどのように答案へ落とし込むのかを具体的に解説しています。
記事と併せてご覧いただき、ご自身の答案の振り返りに活用していただければ幸いです。




