令和8年度の技術士第二次試験・総合技術監理部門の記述式問題では、「地方創生」がテーマとなりました。
前回に引き続き、今回の動画ではこの問題を振り返り、設問2をどのように考えればよかったのかについて、論文骨子の一例を示しながら解説しています。
設問2では、設問1で挙げた2つの取組について、地域のステークホルダーとの連携を含めた具体的な取組内容、その取組がアウトプットの達成につながる理由、さらに直面する障害と対応方策を記述することが求められました。
特にポイントとなるのが、総合技術監理の5つの管理をどのように活用し、管理間のトレードオフをどう捉えるかです。
今回は、設問2で求められた「総監らしい考察」について考えてみたいと思います。
設問2では「具体的な取組」だけを書けばよいわけではない
設問2では、設問1で概要を示した2つの取組それぞれについて、
- 地域のステークホルダーとの連携方法を含む具体的な取組内容
- その取組がアウトプットの達成につながる理由
- 直面する障害と、その対応方策
を記述することが求められています。
さらに③では、2つの取組それぞれについて、総合技術監理の5つの管理分野のうち2つ以上の視点を含め、異なる管理分野のトレードオフに留意することが明示されています。
つまり、単に「地方創生のためにこんな取組を行います」と書くだけでは十分ではありません。
取組を実施するときに、
「誰と連携するのか」
「なぜその取組が成果につながるのか」
「実施すると、どのような問題が生じるのか」
「複数の管理分野から見たとき、どのようなトレードオフがあるのか」
「それをどのように調整し、全体最適につなげるのか」
まで考える必要があります。
ここに、総監部門ならではの特徴が表れていると言えるでしょう。
具体例①「地域資源の活用促進」を総監の視点で考える
動画では、設問1で取り上げる事業の一例として「地方中核都市A駅周辺都市再生事業」を設定しています。
そして1つ目の取組を「a.地域資源の活用促進」としました。
例えば、市、地元企業、商店街、金融機関、大学、地権者等による官民学金の協議体を設置し、駅周辺の遊休公有地、空き店舗、既存建築物などを可視化・共有します。
そのうえで活用方針を合意し、商業、観光、スタートアップ等の拠点として再生する取組です。
地域の人材・資金・資産を組み合わせることで、地域内投資や創業、雇用、交流人口などを創出できれば、「a.地域資源の活用促進」というアウトプットにつながっていきます。
ただし、ここで終わってしまうと、取組の説明が中心となります。
設問2でさらに考えたいのが、この取組を実行したときに生じる障害です。
例えば、
【経済性管理】民間収益性の確保
⇔
【社会環境管理】景観・地域文化等の保全
というトレードオフが考えられます。
民間事業者にとって魅力的な収益性を追求する一方で、地域が大切にしてきた景観や文化を守る必要もあります。
そこで、社会的便益も含めたKPIを設定するとともに、公有地活用、補助、地域金融等を組み合わせ、事業採算性と地域価値の両立を図ることが考えられます。
このように、「取組→成果」だけではなく、「取組→障害・トレードオフ→対応方策」まで考えることで、総監の視点を示しやすくなります。
具体例②「公共交通の維持」では別の管理分野を登場させる
2つ目の取組として、動画では「i.公共交通の維持」を取り上げています。
市、鉄道・バス・タクシー事業者、住民、福祉・商業施設等が連携して交通需要を分析し、鉄道・バスの接続改善、デマンド交通、MaaS等を組み合わせ、地域公共交通ネットワークを再構築する取組です。
交通手段間の役割分担と接続を最適化し、利用者の増加と運行効率化につなげることで、「i.公共交通の維持」を目指します。
この場合にも、複数の管理分野から考えてみます。
例えば、
【経済性管理】赤字削減・運行効率化
⇔
【安全管理・人的資源管理】交通弱者の移動確保、運転者の安全・労務確保
というトレードオフが考えられます。
利用者の少ない路線を単純に削減すれば経済性は改善するかもしれませんが、高齢者をはじめとする交通弱者の移動手段を失わせる可能性があります。
また、人手不足の中で運行サービスを維持しようとすれば、運転者への負担にも配慮する必要があります。
そこで、需要に応じたデマンド交通等への転換、社会的便益を踏まえた路線評価、適正な勤務管理などを組み合わせ、全体として持続可能な公共交通を考えていくことになります。
2つの取組の「切り口」を変えてみる
設問2の答案を考えるうえで、もう一つ意識しておきたいのが、2つの取組を似た内容にしすぎないことです。
例えば、
「ハード+ソフト」
「メインとなる事業+人材育成」
といったように、性格の異なる取組を設定する方法があります。
今回の骨子例でも、「地域資源の活用促進」と「公共交通の維持」という異なる切り口を設定しています。
取組の性格が異なれば、そこから生じる障害も変わり、登場する管理分野にも幅を持たせやすくなります。
結果として、経済性管理ばかりに偏るのではなく、安全管理、人的資源管理、情報管理、社会環境管理なども自然な形で論文に登場させることができます。
これは、問題文で評価上重視するとされている**「考察における視点の広さ」**を示すうえでも意識したいポイントです。
先に「トレードオフ」を考えてみるのも一つの方法
答案を考える際、①の「具体的な取組内容」から順番に考える必要はありません。
むしろ設問2では、③の**「障害と対応方策」から逆算して骨子を考えてみる**のも一つの方法です。
例えば、
「この取組では、経済性を高めようとすると何が犠牲になるだろう?」
「安全性を優先すると、経済性や人的資源にはどんな影響があるだろう?」
「地域住民と事業者では、何を重視するかが違うのではないか?」
と考えてみます。
そこからトレードオフが見えてくれば、
「では、どんなステークホルダーと連携する必要があるか」
「どのような情報を集めればよいか」
「どんな管理技術を使えば調整できるか」
と考えを広げやすくなります。
総監では、5つの管理の名称をたくさん書くことそのものが目的ではありません。
複数の管理分野から業務を俯瞰し、トレードオフを認識したうえで、全体最適となる対応を考える。
この思考プロセスを答案の中でどのように示すかが重要です。
試験後だからこそ、設問2をもう一度振り返ってみる
筆記試験を終えた方は、まずは本当にお疲れさまでした。
一息つきたいところだと思いますが、記憶が残っているうちに、もう少しだけ手と頭を動かしてみることをおすすめします。
特に設問2について、
「自分はどの管理分野を使っただろう?」
「管理間のトレードオフを具体的に示せていただろうか?」
「2つの取組で、異なる視点を示せていただろうか?」
「障害に対する対応方策が、単なる精神論になっていなかっただろうか?」
と振り返ってみてください。
合否を予想するためだけではなく、自分が総合技術監理をどのように理解し、実務に活用しているのかを整理する機会にもなると思います。
今回の動画では、「地方中核都市A駅周辺都市再生事業」を例として、設問2の論文骨子を具体的に紹介しています。
ご自身の答案と照らし合わせながら、「自分の事業・組織ならどう書くか」という視点でご覧いただければ幸いです。
以下の動画をどうぞ!



