技術士第二次試験の筆記試験では、試験後に自分の答案を振り返ることも大切です。
今回は、令和8年度の建設部門・必須科目Ⅰ-2「グリーンインフラ」の問題を題材に、設問3について考えてみます。
設問3では、設問2で示した解決策に関連して、「新たに浮かび上がってくる将来的な懸念事項」と「それへの対策」を、専門技術を踏まえて示すことが求められています。
ここで悩みやすいのが、
「将来的な懸念事項とは、どこまで書けばよいのか?」
という点ではないでしょうか。
単に「○○が懸念される。そのため対策が必要である」と書くだけでは、技術者としての専門性や問題分析力が十分に伝わりにくくなります。
今回の動画では、設問3をどのような構造で考えるとよいのか、具体例を交えながら解説しています。
設問3では「設問2のその先」を考える
まず意識したいのは、設問3を設問2から切り離して考えないことです。
設問2では、最も重要と考える技術課題を一つ挙げ、それに対する複数の解決策を示します。
今回の振り返りでは、「自然の多様な機能を活かした流域・地域の防災機能の向上」を最重要課題として、次のような解決策を整理しました。
・流域治水とグリーンインフラ(GI)の一体的実装
・生態系ネットワークを意識した防災空間の多機能化
・効果の定量評価と順応的管理
設問3では、このような解決策を実際に進め、社会に実装・普及していったとき、その先にどのような問題が生じる可能性があるかを考えます。
つまり、
「この解決策を進めると、将来どんな新しいリスクが出てくるだろう?」
と一歩先を想像することが出発点です。
「懸念事項名」だけで終わらせない
設問3で特に意識したいのが、懸念事項を挙げるだけで終わらせないことです。
答案では、次の流れを意識すると整理しやすくなります。
① 新たな懸念事項
→ ② 発生理由
→ ③ 生じる影響
→ ④ 専門技術を踏まえた対策
ポイントは、「なぜ?」を一段入れることです。
例えば、グリーンインフラを面的に拡大していく場合、「維持管理負担の増大」が将来的な懸念事項として考えられます。
しかし、
「維持管理負担の増大が懸念される。適切に維持管理する。」
だけでは、やや物足りません。
なぜ維持管理負担が増えるのか。その結果、どのような問題につながるのか。そして、技術者としてどう対応するのか。
ここまで因果関係をつなげることで、答案の説得力が高まります。
グリーンインフラから考える3つの懸念事項
今回の動画では、具体例として3つの方向から将来的な懸念事項を考えています。
一つ目は、維持管理負担の増大とGI機能の低下です。
GIを面的に拡大すれば、植生管理、堆積土砂の除去、透水機能の確保など、維持管理すべき対象も増えていきます。
管理が十分に行われなければ、雨水の浸透・貯留能力が低下し、防災施設として期待した性能を発揮できなくなる可能性があります。
そこで、施設ごとの要求性能や点検頻度、管理水準を定め、モニタリングによって機能低下を早期に把握する「予防保全型管理」が重要になります。
二つ目は、気候変動等によるGI効果の不確実性です。
自然を活用するGIの機能は、降雨特性や植生状態などの影響を受けます。
気候変動が進み、計画時の想定を上回る降雨が発生すれば、GIだけでは十分な防災効果を得られない可能性も考えておく必要があります。
そのため、流出抑制量や浸透量、生態系などを継続的に計測・評価し、必要に応じてGIの追加配置やグレーインフラとの組合せを見直すなど、モニタリングに基づく順応的管理が重要になります。
三つ目は、多主体化による合意形成・管理責任の複雑化です。
流域単位でGIを展開すれば、河川管理者だけでなく、道路・公園管理者、自治体、土地所有者、住民、企業など、多くの主体が関係します。
その結果、費用負担や土地利用、維持管理責任などを巡る調整が複雑になり、実装や管理の継続性に影響する可能性があります。
計画段階から関係者を特定し、GI導入の目的や効果、費用、維持管理責任などを共有したうえで、協議会等を活用して役割・責任を明確化していくことが対策として考えられます。
自分で示した解決策を否定しない
もう一つ注意したいのが、設問3で設問2の解決策そのものを否定してしまわないことです。
設問2で、
「この解決策が有効です」
と述べた直後に、設問3で、
「しかし、この解決策には大きな問題があるので実施すべきではない」
という展開になれば、答案全体の論理が不安定になります。
設問3で示したいのは、解決策を否定することではありません。
解決策を実施することで生じ得る新たなリスクを予見し、そのリスクを専門技術によってコントロールすることです。
ここに、将来を見通しながら業務を遂行する技術者としての力量を示す余地があります。
設問3は「リスクを挙げる問題」ではない
設問3対策として、次の3点を意識してみてください。
・設問2の解決策を実行・普及した「その先」を考える
・「なぜ?」を一段入れ、懸念事項→原因→影響→対策とつなげる
・自分の解決策を否定するのではなく、専門技術によってリスクをコントロールする
設問3は、単にリスクの名称を知っているかどうかを問うものではありません。
解決策を社会実装した将来を想像し、そこで発生する可能性のある問題を予見し、技術的な対応まで考える。
そのような**「将来を見通す技術者としての力量」**を答案でどう表現するかがポイントと言えるでしょう。
今回のYouTube動画では、令和8年度・建設部門必須科目Ⅰ-2を題材に、具体的な懸念事項と対策を示しながら、設問3の考え方を詳しく解説しています。
設問3の書き方に迷っている方は、ぜひ動画もあわせてご覧ください。




